2018年07月11日

『ガラスの梨 ちいやんの戦争』越水利江子著

978-4-591-15908-8[1].jpg越水利江子さんの最新作
『ガラスの梨 ちいやんの戦争』(ポプラ社)を
読ませていただきました。
冒頭の言葉に、がつんとやられました。
越水さんの想いを込めた言葉は、
「けれど、わすれてはいけない。わたしたちはみな、
過去から続く流れのとちゅうに立っていて、そこはいつでも、
思いもよらぬ未来へ向かう川のとちゅうでしかないということを。」
さらに「どれほどひどく、不幸な過去であっても、見つめ直すことで、
時は、真実を映し出してくれる。」と続きます。
これは、戦争はもちろん自然災害、事件、事故、
人の穏やかな暮らしを揺さぶる事象すべてに当てはまるように思います。
見つめ直し、繰り返し、繰り返し、伝え続けなければいけないことというものが確かにあるのだと。
そしてそれをすることで、少しでも未来がよくなる可能性があるのだということを。
今、伝えることで、未来を少しでも良くしようと、越水さんが腹を括ってこの作品を書かれたことが、
冒頭の言葉から伝わってきました。
主人公は、小学三年生の笑生子です。
あたたかい家族にかこまれた少女の幸せな暮らしが、戦争によってどう変わってゆくのか。
生き延びた笑生子が、どのような選択をするのか。
少しずつ、じっくりと、と、思って読み始めたのですが、一気に読まされてしまいました。
特に、焼夷弾や機銃掃射の中を逃げ惑うシーンの描写のすさまじさが胸に迫りました
実は私のふるさと日立も、空襲や艦砲射撃に遭った土地です。
折々に、父や母から当時の話を聞かされて育ちました。
その印象があまりに強かったせいか、幼い頃の悪夢は決まって
「山の向こうから突然現れた戦闘機に追いかけられて、機銃掃射に遭う」というものでした。
『ガラスの梨 ちいやんの戦争』を読んで、ずっと忘れていた悪夢を思い出しました。
でも、それは大切なことなのだと思いました。
今、何をするか、何を選ぶかによっては、あの悪夢が現実になる可能性もあるのです。
この物語は、越水さんのお母様がモデルで、終盤にはご自身につながる赤ん坊も登場します。
どれほど苦しく、たいへんな執筆であったかは、想像に難くありません。
クリと成年兄やんとの、夕焼けの土手の光景の穏やかさが心に残りました。
posted by roku at 14:43| Comment(0) | カテゴリ無し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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